予防接種とは

病気に罹ってしまった場合は、適切に診断・治療を行い、患者さん自身の免疫力など治す力も得て、改善を図っていきますが、何より病気に罹らなくて済むならば、それに越したことはありません。なるべく病気に罹らないようにするための手段のひとつが、医療の進歩によって生み出されたワクチンによる予防接種です。当クリニックでは、インフルエンザ、肺炎球菌、風疹・麻疹(MRワクチン)の予防接種を行っています。
ワクチンは様々な方法で病原性や毒性を弱めた、あるいは無くしたウイルスや細菌などの病原体、毒素のことで、このワクチンをあらかじめ接種することにより、獲得免疫反応を起こし、自分自身の抵抗力を上げて、病気の感染予防を図ります。
予防接種をすることで、患者さん自身が感染したとしても、発症するリスクを低減させたり、あるいは重症化すること防ぐことにつながります。そしてもう一つ大切なことは、会社や学校、地域などで予防接種を受けて免疫を持っている人が増えてくれば、その集団として、何らかの事情で予防接種を受けられない人がいても、感染症の蔓延する可能性が、ある程度抑えられることが期待されます。一人一人が予防接種を受けることは、自分自身を守るだけでなく、地域や社会を守ることにもつながります。
インフルエンザワクチン
インフルエンザは毎年、秋から冬にかけて流行します。通常の風邪と異なる部分は、38度以上の高熱が出る、のどの痛みやくしゃみ、鼻水、咳などの局所症状に加えて、頭痛や関節痛、筋肉痛などの全身症状も出る、急激に発症する、などがあります。
インフルエンザは肺炎や脳症などを引き起こし、重症化する可能性もあります。その危険性が高い人は、高齢者、幼児、妊娠中の女性、持病のある方(喘息、慢性呼吸器疾患/COPD、慢性心疾患、糖尿病など代謝性疾患のある方など)で、体力や免疫力が落ちているときに、他の感染症に罹患してしまう場合もあり、さらに重篤化する危険性がありますので、そうした方およびその周囲の方は、インフルエンザの予防接種をすることをお勧めします。
インフルエンザは、頻繁にその構造を変えるため、その年に流行するインフルエンザの型に対応したウイルス株によるワクチンを選ぶために、世界保健機関(WHO)のもとで世界各地の流行情報が集められ、そうした情報をもとにシーズンごとに見直しが行われています。ですので、インフルエンザへの感染予防のためには、毎年ワクチンを接種するのが良いでしょう。ワクチンは効力を発揮するまでに約2週間、その後の持続効果は約5か月です。日本では、毎年12月~翌3月頃までにインフルエンザが流行しますので、11月中旬頃までに受けることをお勧めします。
肺炎球菌ワクチン
肺炎は日本人の死因で常に上位に位置しており、肺炎で亡くなられる方の95%以上の方が65歳以上の高齢者となっています。そして高齢者の肺炎の原因として、最も頻度が高いのが肺炎球菌感染症なのです。肺炎球菌は鼻やのどの奥に付きやすい細菌のひとつです。健康で十分に免疫力があれば、感染症が引き起こされることはありませんが、何らかの理由で体調を崩し、免疫力が低下した場合などに、肺炎、髄膜炎、敗血症(全身の炎症反応)、中耳炎などを発症する場合があります。
加齢とともに免疫力が低下するために、肺炎球菌感染症を発症するリスクも高くなりますが、さらに次のような持病がひとつでもあると、さらにリスクが上昇する傾向があります。
- 脳梗塞
- 心疾患
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 慢性肺疾患/COPD/気管支ぜんそくなど
- 慢性肝疾患
- リウマチ/自己免疫疾患/免疫不全 等
一度肺炎になると、肺は元に戻らず、また体力を奪われることで再び肺炎に罹りやすい状態になってしまいます。肺炎を何度も繰り返すうちに、全身が弱まってしまうと、大きく生活の質は低下してしまいます。そうすると経済的にも、ご家族にも負担が大きくなってしまいます。肺炎球菌のワクチンを予防接種することで、低減できるリスクは、なるべく低減するのが良いでしょう。
MR(麻疹風疹混合)ワクチン
MRワクチンは麻疹(はしか/Measles)と風疹(Rubella)の予防接種に使われるワクチンです。それぞれの毒性を低減したウイルスを使用した、いわゆる生ワクチンで、麻疹ワクチンは鶏の細胞を、風疹ワクチンはウズラの細胞を使って作られます(卵そのものを使っていないため、卵アレルギーによるアレルギー反応はほとんどないとされています)。
麻疹は「はしか」とも呼ばれる病気で、感染力が強く、発熱や発疹、咳、鼻水、めやになどの症状が出ます。基本的に10代~20代に多い感染症です。2015年にはWHOによって日本国内からの麻疹排除が認定されましたが、海外からの流入等で再び感染リスクの可能性が出てきています。また風疹は「3日はしか」とも言われ、麻疹と同様に発熱や発疹があり、さらに首や耳の後ろのリンパ節が腫れるのが特徴です。
もともとは子供の病気というイメージですが、近年では麻疹、風疹ともに成人で流行する傾向がみられています。成人でかかると重症になることが多く、とくに妊娠初期の妊婦が風疹にかかると、赤ちゃんに耳や眼、心臓等に異常をきたす、先天性風疹症候群が現れる危険性があります。出産を控える方だけでなく、周囲の方もMRワクチンの接種をお勧めします。
京都市ではMRワクチンに関し、子供の定期予防接種として、生後12月から24月を第1期、小学校就学前の1年間を第2期として2回の接種を全額補助(無料)で受けられるようにしています。
また、大人の風疹対策として一部公費負担(妊娠を希望する女性対象)しています。